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医学用語あれこれとギリシャ神話(2)

更新日:2014年02月07日

2. 浮腫 (edema)、エディプスコンプレックス

前回のブログでキメラという言葉を読まれたとき、エジプトのスフィンクスを思い浮かべた方も多いかと思います。

スフィンクスはギリシャ神話でも登場します。上半身が乙女の姿、下半身はライオンのこの妖怪は、通行人に謎をかけ、解けなければ谷に突き落としたり、食べ殺したりしていました。ある日そこを通りかかった男性にスフィンクスは早速“ひとつの声を持ち、四足、二足、三足となるものは何か”と謎をかけました。見事“人間”と謎を解かれたスフィンクスは絶望して谷底に飛び込みます。ちなみにこの謎々を学生にしますと、かなりの効率で正解されますので、この謎々は意外によく知られているようです。

その男性の名をオイディプスといいます。オイディプスはテーバイの王ライオスとイオカステの息子ですが、呪われていた王はデルフォイの神託(以前ギリシャを訪問したとき、デルフォイの神託所を訪れてみたいと思ったのですが、アテネから遠くてあきらめたのは心残りでした)により、子供の手によって殺害され、その子が母と結ばれることになると告げられ、生まれた子供に黄金のピンを刺し山に捨てさせました。しかし、羊飼いに拾われ、子供のいなかったコリントスの王に育てられますが、この腫れた(ギリシャ語のoidein)からoidema (浮腫)(現在のedema)の語源となっています。そしてこの子供は“足が腫れた者”を意味するOedipus(oidein+pous:足)と呼ばれます。

成人したオイディプス(エディプス)は出生の秘密を知り、両親に会いに旅に出ます。旅の途中で、供を連れ、立派な輿に乗った初老の男性の一行と出会います。狭い道で道をゆずれ、ゆずれないで、争いになり、とうとう輿の男性を殺害してしまいました。これがライオス王でした。その後、スフィンクスを退治し、テーバイに入りますが、長年スフィンクスに苦しめられ、王も亡くなっていたテーバイでは、スフィンクスを退治したものは王の位と王妃を娶ることを約束していましたので、彼は王となり母が妻ということになりました。

このようなことから、男児が母親に対して強い独占欲を持った愛情を抱き、父親に対して強い対抗意識を燃やすことをエディプスコンプレックスという心理学上有名な言葉が生まれています。

オイディプスは4人の子供をもうけますが、後に真実を知った母は自殺し、自身は真実を見抜けなかったとして、自らの眼を突き、盲目となり、娘アンティゴネと放浪の旅にでます。旅の途中で、父を看取った後、テーバイに戻ったアンティゴネには更なる悲劇が・・・。この続きに興味がある方はギリシャ神話の世界へどうぞ。